幸町の設計事務所

海の近くで猫と共に暮らしたい。

海の近くで猫と共に暮らしたい。
そんな想いから自邸を建てることにした。敷地は海岸からほど近い港町。敷地面積はわずか53㎡(16坪)しかなく、初めて見学に訪れた際は車が縦列で2台しか止まらない駐車場になっていた。ディベロッパーやハウスメーカーの土俵にのることのない、町の隙間のような小さな土地。これは設計が大変だな、、と懸念しつつも、ゆったりと時間が流れるこの街の雰囲気に惹かれて購入を決意した。

設計において重点的に考えたことは、どうやってこの狭い敷地の中に低予算で日照を取り入れるか。天窓などを計画すれば容易に採光は確保できるが、もう少し実験的な解決を試みたいと考えた。ここでは南道路に面する建物のボリュームを限界まで低く抑え、中庭的なボイド空間を設けて、光が奥まで差し込むように計画している。ただでさえ狭い敷地に中庭を設けるというのは勇気がいる判断であったが、結果的に建物の中には柔らかい光が差し、中庭に設けたささやかな菜園ではハーブなどが育ち、暮らしに彩りを与えている。

小さな敷地では、余計なものを省きできるだけシンプルに物事を分解して、必要な機能をコンパクトに落とし込む作業が必要不可欠になる。結果、この家には無いものが多い。例えば玄関、TV、バスタブ、インターホン。それらは少なくとも自分にとっては不要なものだった。面積と予算が限られる中で自分の生活において本当に必要なものは何かをよく考え、向き合う良い経験になった。


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Photo by ©Takayuki Kikuchi

Data

所  在/神奈川県
竣  工/2024.01
意匠設計/松盛 真衣
構造設計/船山 龍之介
造  園/井出 太亮・森 俊介
施  工/株式会社建築及川
規模構造/木造2階建
敷地面積/53.92 ㎡
建築面積/31.10 ㎡
延床面積/51.94 ㎡